【くずし字・古文書】読めるようになるために
独学でくずし字を勉強してはや数年。学習会を開催するなど、古文書を学習するということについて考えることが多い日々を送っています。
古文書やくずし字に興味があり、勉強したいと思っている方の参考になりましたら幸いです。
Contents
はじめに
くずし字と言っても戦国武将の手紙、浮世絵の横に書かれている文章、政治的な文書など、時代や書き手により文字は異なります。また身分や職業によって語彙も異なります。なので、基本的なテキストを読むと同時に興味のあるものにターゲットを絞りいろんな種類の文書を繰り返し読むのが良いと思います。
簡単なものなら数ヶ月で読めるようになる
はじめてくずし字を見た時、これは果たして読めるようになるのか?と思いました。
しかし私の体験では集中して数ヶ月、反復練習をすると簡単なものは読めると感じています。
と言うのも、TOEICのスコアを短期間で上げた友人が「3ケ月みっちりやり込んだ」という話を思い出し、古文書ももはや外国語のようなものなので、とりあえず3ケ月やってみよう!と一念発起したところ簡単な物は読めるようになった次第です。
私はこの体験から「勉強すれば少しずつ読めるようになる」という自信を得て、学習を続けいろいろな出会いもあり地道ではありますが経験を積んでいる状況です。
つまり、まずは数ヶ月、集中して勉強し自信をつけることがはじめの一歩となります。
AIが発達し不要なスキルになるのか?
くずし字もAIで読めるものがちらほら出てきており、これからさらに進歩すると勉強をする必要はなくなるのではないかという話をよく耳にします。
私は「昔の人が書いた文章を読んでいる」ということ自体に喜びを感じて勉強をしているので、AIをマイナスに感じることはあまりありませんが、周りからはちらほらそのような声を聞きます。もしこれから勉強しようとしている方が、今後AIにとって代わられる不必要なスキルになるのではないかと不安を感じて躊躇しているのならば、そのようなことはないと申し上げたいです。
確かにAIの正確性が上がっていき、そのうちほとんどの文字を読んでくれる時代が来るかもしれません。しかし、アプリを使ってみると分かりますが自分がある程度読めないとそれが合っているのか間違っているのか分かりません。例えば英語の翻訳アプリも、ある程度の英語の知識があるから安心して使えるのではないでしょうか。
勉強をしていれば、AIが進歩した未来で上手く付き合っていくことができると思います。
はじめの一歩
お金をかけず図書館の本を駆使する方法と、課金(NHK講座など)して自分を追い込む方法があります。
1.図書館のテキストを何度も解く
図書館の棚にある本を端から解く。
簡単かつ経済的な方法ですが、一人でやる上にお金もかかっていないので途中で挫折する可能性も有。
私の場合は、読めるようになる自信がなかったのでとりあえず地元の図書館に並んでいる本を3ケ月やり込んでから続けるか決めようと思い始めました。
その結果、「例で挙げられている文書を完璧に翻刻できるまで繰り返す」ということを3ケ月やったところ、意外と読めるようになり最初の1歩が進んだように感じました。
2.講座を受講する
私の周りでよく聞くのは【文部科学省認定講座】古文書を読むです。
レベルに応じて4種類のコースがあります。内容は江戸時代の文書一般を中心としているようです。一定要件をクリアするとインストラクターに認定され、お仕事として活躍されている方もいるようです。
課金しているとはいえ通信は個人学習なので、モチベーションが続かないかもしれない方は外部での学習もあります。例えば市区町村などの資料館や文書館、生涯学習としての企業の講座などいろいろあり、NHKと併用している方が多い印象を受けます。
会場での教室は友達や繋がりができるのも大きなポイントです。
もう一歩、読めると実感するために
挫折を回避するためには、上達を実感することが大切です。
まずは数ヶ月自分を信じて頑張ると(ターゲットによりますが)、テキストを4〜5冊やり込むと「読めるかも!」と少し自信が湧いてきます。
しかし私の場合喜びも束の間、次は文字列として読めても意味がわからないという壁にぶち当たりました。もしかして、この壁を越えるには研究者になるしかないのでは?と絶望した記憶があります。
結論から言うと研究者にならずとも、文法を学び、語彙を増やすことで飛躍的に読めるようになります。
1 文法
最低限の文法として
こちらのテキストをお勧めします。
例えばよく出てくる「〜候間(そうろうあいだ)〜」。原因や理由を示していて、「〜ので・〜によって」と訳します。
このテキストを目に通しておくと確実に理解の助けになると思います。
2. ターゲットを絞って語彙を増やす
例えば商人であれば商人のよく使う言葉や、文書の頻出単語があったり商人ワードがある程度決まっています。興味のある分野の翻刻つきの古文書を何度も読み、その語彙を習得することで、読みにくい文字であっても流れから推測することができるようになります。
当時の人も教科書を使って勉強していたようで、今のように広い分野を勉強したり、ネットで言い回しを調べたりすることはできないので、必然語彙は限定されると思っています。全然わからない・・と心が折れそうになった時は、このように考えて自分を奮い立たせましょう。
時間をかけてゆっくり
とはいえ、本当に理解するためには時間をかけて学ばなけれなりません。
私は図書館の古文書テキストを翻刻練習+『おさらい古文書の基礎 文例と語彙』とネットの史料をみっちりやったところ“ほんの少し読める人”になりました。
読めるという言葉には①翻刻できる②表面上の意味がわかる③その背景がわかる、という3要素があると考えます。
私の数ヶ月の学習でできるようになったのはごく簡単な文書の①と②です。
やはり読みにくいものは時間をかけて経験を積むうちに次第に読めるようになり、また③背景を学ぶこともとても時間のかかるもので、独学では物足りず結局大学で学び直しています。
さいごに
図書館にあるテキストは、江戸時代の御家流と呼ばれるものがほとんどです。また例文も幕府や藩の公的なものや個人的なものだと質地や奉公の証文が多いようです。私は江戸時代の地方文書に興味があったため入門として図書館に並んでいるテキストがぴったりだったので片っ端から読みましたが、もし戦国武将の書状であったり、絵巻、中世の文書など決まってのであればそのテキストを探すことをおすすめします。
私は中世文書にも興味がありましたが、中世文書の入門テキストは図書館になく、ネットのデータベースで史料を見たものの分からなすぎたので大学の講座を受講しました。
古文書を読むと言うことは英語など外国語の学習と似ていて、語彙や文法の学習、そしてその背景となる文化や歴史の知識も身につけることで、少しずつ書かれいることが読めるようになっていくのだと思います。